ONE STORY(1)

いつの間にか雨が降っている。私は、ゆっくりと目を開ける。刺すような激しさで背中に打ち付ける雨粒が、私を目覚めさせたのか。地面に叩きつける土砂降りの雨粒を見たからなのか。騒音にも近い雨の音が耳に届いたからなのか。

厳密に言えばなんでもよかった。意識を体に向けると至る所に痛みが走る。それは電気回路にスイッチが入ったかのように、足のつま先から頭のてっぺんまで満遍なく。

力の入らない右腕を意識しながら、ようやく頭が働き始める。雨が降っているのに、地面は意外と暖かい。全身に力を込めて、私は体を反転させ仰向けになる。上を見つめたところで空があるだけで、全部さらけだしたからといって空が答えてくれるわけでもない。にもかかわらず、私はこの瞬間雲の向こうにある太陽を求めてみる。

泣いているのか、雨なのかもすでに分からず、何が良いことで何が悪いことなのか。雨に問いかけようとした時、彼女の声が頭の中に響いた。

「そこまでして、何かと闘う理由は何なの?」

草原が好きだと常日頃いっていた彼女は、私ではなく、私ではない誰かを選んだ。私は強がりという言葉をどうにか自分で説明しようと、頑に、意志で同じだけの強度を保ってきた。それでも私が持つ手のひらの感覚と心の飢えはとても正直で、1つ息をつく。

私は、膝を立てて立ち上がる体制を整える。立ち上がろうと腕に力を込めると肩に力が加わり、私はよろめいた。

雨が止む。

「いつまでそんな惨めな格好に酔っているんだ。最低限の感覚だけは握りしめておかないと。明日、いや数分後すらも不確かな未来に、姿形を持たない物語を描く、か」

必要以上に大きな傘を抱えて、その人は立っていた。

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