何者であるのか

私は、海の上を歩いている。
海はかすかに波打っているがほぼ静寂に等しく、水の中に入りたいと思えば、板のように固いその海面をくぐり、水の中に入ることができる。

右足をそっと前に出すと、それまで接地していた足の裏が水の感覚を無くし、代わりに水滴がぽたぽたと足の裏を流れて下に落ちていく。

私が何者であるのか、そのことについて考えてしまうと、途端に私の意識とは無関係に、私の両足は水の中にゆっくりと沈んでいってしまう。

私の体が海面よりも上にあるということは私の意識は表に立っているということを表しており、私身体が完全に水の中に浸ってしまうということは、私の意識が裏に隠れてしまっているということを表している。

と、神様は私に説明をしてくれた。

では、なぜ私は意識的にも無意識的にも海面に入ったり出たりすることができるのかと、私は神に聞いたことがある。その時の神の答えはシンプルだった。

「海面の上と下を、移動するということが、意識的、無意識的だと分けているからだ」

全く意味が分からなかったが、私は結局のところどちらでもいいということだと結論付けた。神は、いつなんどきでも私の声を聴いてくれるとは限らない。